カカと僕。
ブラジル代表は久々の来日だった。
ピッチ上には躍動するカカの姿。
この時のカカは選手として最ものっていた。当然のようにブラジルが勝った。
僕は試合が終わってもなんとなくスタジアムに残った。ブラジルの強さに圧倒され余韻に浸っていた。
観客がまばらになった頃ようやく立ち上がった。
スタジアムの道を歩いているとカカがやってきた。僕を見つけると笑顔で手を振ってくれた。
世界的スターと僕が知り合いとはあまり現実的じゃなくて自分でも驚きだ。
いつこのように知り合ったかあまり覚えていないがなんとなく話をするようになった。
今回も少しだけ話をした。
いつもお互いの近況を報告したりする。この日も2人でボーッとスタジアムの芝を見ながら話をした。
「2人で写真を撮らない?」
記念になると思い僕は何の気なしに提案してみた。
「ゴメンそれはダメなんだ」
カカは悲しそうに返事をする。
一般人と写真を撮るのはカカにとってはあまり好ましいことではないのだろう。
カカの写真1枚が高値で売られたりパパラッチのネタになることもある。
断られたことでそのことに気が付き謝った。
「いいんだ。じゃあかわりにこれをあげるよ」
そういってカカは試合で着ていたユニフォームをくれた。長袖で背番号は10。汗で湿っていて少し泥がついていた。
「いいのかい?ありがとう!大切にするよ」
ユニフォームを貰ったのでかわりに僕のTシャツを上げることにした。
その時着ていたスターウォーズのTシャツとカバンに入っていた日本のインディーズバンドのTシャツ。
カカにどっちがいいか聞いてみたらバンドTシャツを選んだ。
カカはとても気に入ってくれたようでまたあの笑顔で礼を言われた。
カカの小さな息子がカカを探しにやってきたので挨拶をして別れた。
部屋にはあの時貰った代表Tシャツがまだある。一生の宝物になるだろう。カカがバンドTシャツを着ているところを想像するとちょっと面白い。
今のブラジル代表にカカはいないけど僕はサッカー選手では1番好きだ。
…という夢を見た。
起きてガッカリした。