『ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち』を読みました。
ハッカーと画家というタイトルから本の内容を予想するのは難しいと思います。一言でいうと『ポール・グレアムさんのエッセイ』です。ですのでポール・グレアムが誰かわからないとピンとこないと思いますのでそこから書きたいと思います。
ポール・グレアム
ポール・グレアム氏は1964年に産まれ、コーネル大学で哲学の学士号を取得し、ハーバード大学で計算幾科学の博士号を取得し、ロードアイランドデザイン学校およびフィレンツェの美術学校で絵画を学びました。
1995年にロバート・モリス氏(あのモリスワームの)とViawebを創立し3年後にはYahoo!に約5000万ドルで買収されのちにViawebはのちにYahoo!Storeとなりました。Lispプログラマで、スパムメール対策であるベイジアンフィルタを考えたりまさに天才ハッカー。この本がエッセイであるなら、デザインの知識もある素晴らしいハッカーが書いた本ということをまずは知っておいた方がいいと思います。
スタートアップが成功した話はもちろん、デザインに対する考えかたは9章の「ものつくりのセンス」に集約されていますし、10章以降はまさにプログラミングの話が書かれています。
感想
この本の感想として「かなり挑発的」というものが多いようです。後に日本版で付け足された第16章の素晴らしきハッカーの冒頭でも「挑発的」とか「議論を呼ぶ」という書評がやけに目立ったと嘆いています。その理由として上げたいのが第12章の文末です。
Viawebで働いていた期間、私は人材募集記事をたくさん見た。1~2年したら警戒すべきライバルとそうでないところとを見分けられるようになった。一番安全なのはOracleの経験者を募集しているところだ。そういうところを警戒する必要は全くない。また、JavaやC++プログラマを募集しているところも安全だ。もしPerlやPythonプログラマを募集していたらちょっと気を付けたほうがいい。もし私がLispプログラマの募集広告を目にしていたらきっとかなり心配していただろう。
この文にポール氏の基本姿勢が書かれていると思います。本の後半にいくにつれwindowsやJavaを虐げる表現が多くなり、Lispは凄いという表現が増えてきます。この辺はプログラマ界隈で言う宗教論になりますので確かに挑発的と捉えられるのも無理はなさそうです。本人は議論を呼ぶように書いたつもりはないと言っているのがまた面白いところです。
ちなみにポール氏のJavaに対する考え方は巻末の用語集にあるJavaで書かれているので興味がある人は読んでみてください。
さて、プログラミング関連の話ばかり最初にしてしまいましたがこの本の面白いところはIT関係の話ばかりではないところです。例えばこの本はオタクはどうしてもてないのか?という話題から始まる。学校での人気をA~Eでランク分けしたら自分はDランクだったというポール氏。人気者になるには努力が必要だがオタクにはそれがわからない。本を読むとティーンエイジャーの頃は結構辛い思いをしたようで、そのことについて自身で深く考察しています。
他にも富の作り方、格差を考えるなどでポール氏の富についての考え方が書かれています。この辺も議論を読んだ内容ですが私はとても納得して読むことが出来ました。この辺から「ポールさんって結構いいこというんだな」と思い始めました。
まとめ
この本を読んだきっかけが転職ドラフトの記事『高額指名エンジニアが選ぶ、影響を受けた本ベスト30』でハッカーと画家が2位になっていたからです。
少し本屋で立ち読みをしてそのまま購入したのですが、読んでよかったと思います。上手いコードを書くこつとかオブジェクト指向で書く意味とかそういう方向ではなく、ハッカーとしての心構えとかLispは最高という強い意志があったり普通の啓発本とはいい意味で違いました。凄いプログラマはある言語に異常にこだわりますが、まさにその典型ではないでしょうか?
本を読んでみて私も少しLispを触ってみようと思いました(難しいみたいですが…)